2027年度向けゼミ募集
最終更新:2026/08/03
遠山ゼミの案内
- ゼミの応募に際しては、本ページ及びこちらのオリエンテーションスライドをご覧の上検討してください。
- ゼミに関する質問は、yuta-toyama@waseda.jp までお気軽にどうぞ。
ゼミの概要
本ゼミでは、産業組織論、経済政策(特に競争・規制政策)、消費者行動(家計行動や数量マーケティング)などにおける応用課題について、経済学の知見及びマイクロデータを活用した実証研究を行います。
例えば以下のような問いを考えてみましょう。
- 「公正取引委員会は航空会社の合併を許可するべきか?」 (例:AIRDOとソラシドエア)
- 「家電メーカーの新製品にどのような価格をつけるべきか?」 (例:バッファローのNasne)
- 「脱炭素を目指すために、企業に対してどのような規制を導入するべきか?」 (例:GXリーグ)
- 「コロナ対策として行われた各種政策にどの程度の効果があったのか?」 (例:特別定額給付金)
これらは政策・ビジネスに対して重要な示唆を与える問いでしょう。しかしながら、皆さんが学んできた経済学の理論分析のみで解答するのが難しい課題です。現実の事象や課題を分析し、その結果を政策・ビジネスへ活用するには、実際のデータと向き合うことが欠かせません。
本ゼミでは、皆さんが興味を持つ政策・ビジネス上の重要な学術課題に対して、経済学に基づいた定量的な分析を行い、政策・ビジネスへのインプリケーションを持つアウトプット(論文とプレゼンテーション)を生み出すことを目指します。
ゼミの特徴
1. 学生の皆さんの自発的な研究活動を中心とします。
そのためのサポート(例:基礎体力強化、研究の進め方、文献の紹介、データソースの提案など)を私は行います。
2. 経済学の知見とデータの融合に基づいた実証研究を目指します。
現実のデータを見て解釈する際に、経済学の知見は非常に強力な「レンズ」となります。
実証研究の方法論について詳しく
経済学においては、実証研究のアプローチとして 「因果推論アプローチ」 と 「構造推定アプローチ」 の2つがあります。両アプローチには強み・弱みがあり、バランス良く学び活用することが重要です。
因果推論アプローチはデータの特徴やたまたま発生したランダムなイベントをうまく活用することで、ある施策・イベントの因果的な効果を推定する方法です。私が過去に行った「特別定額給付金の効果」の推定ではこのアプローチを用いています。なお、本アプローチに関する良い解説本として伊藤「データ分析の力」が挙げられます。
一方、構造推定アプローチは、経済学の理論モデルとデータ分析を融合したアプローチです。理論モデルを構築した上でモデルの要素をデータから推定し、シミュレーション分析を通じて、まだ実施されていない施策の効果や企業行動の結果について予測を行います(関心のある方は上武・遠山・若森・渡辺「実証ビジネス・エコノミクス」のはしがきをご覧ください)。
これら2つのアプローチ双方において、経済学の知見は非常に重要となります。構造推定アプローチは理論モデルが必要であるため言うまでもないでしょう。一方、因果推論アプローチにおいても、推定した因果効果を解釈し、それが政策・ビジネス上どのような意味があるかを考える上で、経済学の視点が非常に重要です。
私自身の研究の中心は構造推定アプローチですが、学部ゼミにおける研究では因果推論アプローチを主軸とし、構造推定については関心のある方に個別に相談に乗るという形をとっています。なお、因果推論アプローチに関して、ゼミ内で扱った講義資料を参考としてアップロードします。応募段階で理解する必要はありませんが、ゼミ内での論文輪読やデータ分析を通じてこのような手法についての理解・習熟を目指します。
ゼミの目指すところ
経済学、データ分析、プログラミングを活かした政策・ビジネスに関する応用研究を行える力を身につけると同時に、中長期的にも新しい知識を学び吸収していける人材になることを目指します。
過去20年、経済学における応用研究・実証研究の重要性は増してきている一方です。その背景には、近年の利用可能なデータの増加(いわゆるビッグデータ)という良い面、そして様々な新しい社会・経済問題の発生という悪い面、双方があります。例えば、テック企業のような新しいビジネスモデルがもたらす負の側面をどのように克服するかは、産業組織論におけるホットトピックの一つです。また、気候変動に立ち向かうべく脱炭素をどのように達成するかは、環境分野における喫緊の課題です。
そして、アカデミアを出た場所においても、データサイエンティストやミクロ経済学エコノミストなど、統計学・経済学の専門知識を活かして活躍する場が広がってきています。テック企業におけるデータサイエンティスト、エコノミストのみならず、エコノミックコンサルティング会社など、その活躍の場は多岐にわたります。もちろん、政策の現場においてもデータ分析・経済学のスキルは強く求められています。
一方で、これらデータ分析・経済学のスキルセットへの期待、そしてこれらを使った職種のブームは一過性のものかもしれません。しかしながら、皆さんが真剣に学んだという経験は、その時代に応じて求められる新しい知識を学び、世を切り開いていく上で強く活きてくるものです。「学んだ知識」は陳腐化するかもしれませんが、「学ぶことができる能力」は一生モノです。
「今すぐ役に立つもの」と「もしかしたら将来役に立つかもしれない(けど今はそうでない)もの」、その2つをバランスよく学んでいくことが理想です。
どういう人に向いているか?
新しい物事を学び、それに基づいてものを作り上げる「プロセス」を楽しめる方に向いているかなと思います。近年(特に2025年後半以降)の生成AIの発展は目覚ましく、単に「知的生産物を生成する」(論文っぽいものを書く)だけならば、極めて容易にできるようになっています。成果物自体ではなく、そこにたどり着くまでのプロセスにこそ価値があるのかなと思います。
逆に言うと、「生成AIがあるから卒論執筆は楽勝だろう」とお考えの方には、本ゼミはおすすめしません。お互いにとって時間の無駄になるでしょう。大学4年間は極めて限られた貴重な時間ですので、より良い過ごし方を模索されると良いと思います。
なお、前節「ゼミの目指すところ」は1期生募集時(2022年)からほぼ加筆しておりませんが、本節は今回新しく足しました。社会・技術のみならず、大学での学びの在り方が大きく変化している難しい時代です。そんな時だからこそ、「学びを楽しみたい」という方とご一緒できると良いと考えています。
ゼミの進め方・運営について
ゼミ及び研究の進め方の詳細については、別添のオリエンテーションスライドを参照してください。ここでは、要点のみを記述します。
- メインのゼミでは、学生の研究の進捗報告を中心に進めます。報告は「短めであるが、頻度多めに」やります。研究、報告、フィードバック、研究…というループをガンガン回していきます。
- 他の学生からの積極的なコメント・質問を期待します。「発表したら後は座っていればいい」という方にはおすすめしません。
- プレゼミから3年生にかけては、少人数のグループワークが中心となります。卒論について個人でやるか・グループでやるかは皆さんにお任せします。
- 卒業論文(演習論文)を必須とします。
- サブゼミは皆さんにお任せします。
- 懇親会・合宿・新歓などの授業時間以外のゼミ活動については、ゼミ生の皆さまに運営をお任せできればと思います。なお脱線ですが、イベントの運営経験・スキルというのは中長期的に極めて重要なものです。大学教員・研究者業界で働いている私ですら、大学時代での学業以外の諸々の経験は今でも役立っています。
- ゼミOB/OGとの交流、紹介なども徐々に設けられるようになればと思います。進路は業界、進学等の観点から様々です。
【重要】ゼミ時間に関する詳細
- 2026年度のプレゼミは秋学期の木曜4限に複数回、対面(教室)で行います。4年生との交流も含めたものです。秋学期全体を通して時間割上木曜4限を空けて頂くようお願いします。
履修科目要件について
ゼミ活動を進める上で、様々な科目を履修し基礎体力をつけていくことは重要です。科目について、皆さんの興味関心に応じて私も様々な提案をさせてもらいます。 特に本ゼミでは実証研究が中心となるため、計量経済学系科目の履修が非常に重要となります。そこで、ゼミに参加される方については、以下の科目の履修を必須とします。
- 2026年秋学期における「計量分析(政治)」の履修を必須とします。なお、それ以前に履修されている方は不要です。
- 定員オーバーの可能性もありますので、一次登録で漏れた場合も二次選考で登録できるよう計らって頂ければと思います。
- 3年次終了までに「計量経済学1」及び「計量経済学2」ないしそのEDP科目の履修を必須とします。
要するに、3年生が終わるまでに、「計量分析(政治)」と「計量経済学」を履修して頂くという形になります。これらの知識は実証研究を進めていく上で非常に重要なものになります。なお、年度によって科目編成が変更される可能性もありますので、その際には私の方から改めて具体的に要件を提示させて頂きます。
私の紹介
産業組織論の実証研究及び環境・エネルギー分野での応用を中心に研究しています。例えば、企業合併の厚生評価(ゼミ応募者用共有フォルダを参照)や電力産業における排出権取引制度の実証分析です。また少しテーマは離れますが、投票行動の実証研究や定額給付金の研究も過去に行っています。
2026年度は特別研究期間(サバティカル)を取得しており、東京大学及びサイバーエージェントAI Labを訪問し研究を進めています。特に後者では、消費者行動及び価格付けに関するプロジェクトに携わっています。
出身や経歴及び日本語で書いた文献などについて、詳しくはこちらのページをご覧ください。
選考について
学部が指定する申請書に加えて、以下で指定する個別課題を、学部事務が指定する締切日までに提出してください。なお、選考に際しては「研究計画」「志望動機」「個別課題における論文要約」の3点を中心としつつ、「これまでの履修科目(とその成績)」についても参考としながら、評価します。
以下、面接及び応募書類に関する詳細です。
面接について
面接の日程は以下です。一人20-25分程度の予定です。皆さんに提出頂いた書類をもとに行います。
- 1次選考:9月15日 (日程調整連絡は9月11日)
- 2次選考:10月6日 (日程調整連絡は10月5日)
- 3次選考:10月27日 (日程調整連絡は10月26日)
なお、日程調整連絡がなかった場合はご縁がなかったものとご理解ください。
学部標準の申請書について
「研究計画」の欄については、興味関心を持ち、研究として取り組んでみたいリサーチクエスチョンについて述べてください。テーマ・トピックは自由ですが、データを用いて取り組むということを前提としてください。また、なぜその問いに回答することが重要なのか(政策的・社会的・学術的意義)、そしてなぜあなた個人としてその問題に興味関心を持ったか(個人的意義)について記述してください。
もし分量などに余裕があれば、データをどのように使えば分析できそうかというアイデアを書いてもOKですが、決して必須ではありません。
個別課題について
個別課題は以下の2点について、A4用紙2枚以内でまとめてください。目安としては、課題1は1枚以上(1,500〜2,000字程度)、課題2は半ページ以内(500字程度)です。なお、フォントサイズや余白の設定によって1枚あたりの分量は変わりますので、括弧内の字数はあくまで目安としてお考えください。
課題1:論文のレポート
以下の論文は、日本における家計の電力需要及び節電行動に関してフィールド実験を行った論文です。
Ito, Koichiro, Takanori Ida, and Makoto Tanaka. 2018. “Moral Suasion and Economic Incentives: Field Experimental Evidence from Energy Demand.” American Economic Journal: Economic Policy, 10 (1): 240-67.
本論文を読んだ上で、以下の点を踏まえた論文のレポートを作成してください。
- レポートは2パートに分けてください。パート1は論文の中身に関する要約、パート2は論文に基づく議論・疑問点です。
- パート1について
- 箇条書きではなく、文章として書いてください。また、適宜段落分けや、段落の先頭について空白を設けるなど、文章として体裁が整ったものにしてください。
- 以下のような内容について触れてください。
- この論文における問い(リサーチ・クエスチョン)は何か?
- なぜ、その問いに解答することが重要か?
- どのようなデータ・手法を用いてその問いに解答しているか?
- この論文の主たる結果は何か?
- 【重要】 統計学の基礎的な知識(1年生必修の統計学入門)を持っているが、本論文を読んだことがない人に向けて書く、というイメージで準備されると良いと思います。(決して、既にこの論文を読んだことがある人・知識がある人(大学教員)向けという書き方はされないようお願いします。)
- パート2について
- ここは箇条書きで構いません。
- 論文を読んでいてわからなかった点・疑問に思った点を具体的に挙げてください。
- 論文における限界点・欠点について議論してください。ただし、論文に書かれている内容をそのまま挙げるだけではなく、あなた自身が考える問題点・欠点を書いてください。
- この論文で得られた結果は、現実の政策についてどのようなインプリケーションを持つか(もしくは持たないか)について、あなた自身の考えを書いてください。
- どのような形で論文を発展させることができるか、もしアイデアがあれば記述してください。
なお、本論文の要約はプレゼミ期間における論文輪読で活用する予定です。
課題2:プログラミング及び統計・計量科目の学習経験及び学習計画
プログラミング経験(R、Stata、Python、Matlab、その他)及び統計・計量科目の学習経験について記入してください。また、上述した「計量経済学系科目に関する要件」を踏まえて、2026年秋学期の授業履修計画について記入してください。なお、現時点におけるプログラミング経験及び計量経済学の知識については選考において重視しません(あくまで参考材料として聞いています)。過去のゼミ生も、ゼミ加入後(2年生秋学期以降)にプログラミング・計量経済学を学び始めた方々ばかりです。ただし、ゼミにおける研究活動においてこれら2つは将来的に非常に重要になるということを理解した上で応募して頂ければ幸いです。
復学者選考への応募希望、及び留学予定の方々へ
本ゼミでは、交換留学及び留学からの復学後のゼミ参加についても臨機応変に対応したく考えております。 しかしながら、ゼミでの学習内容、特に統計・計量系科目やプログラミングの学習は累積的なものになります。したがって、復学後に参加を希望される場合には、留学中に同等の科目を履修・学習していただく必要があります。詳細について尋ねたい方は遠山までメールでお問い合わせ頂ければと思います。
最後に
私個人の考えとして、大学は「ビュッフェレストラン」のような場所であって欲しいと思っています。学業、サークル、学外の活動、アルバイト、などなど、大学4年間の時間の使い方として様々なオプションがあり、それを皆さん自身が自由に選べるという場所です。実際、私が学部生だった頃は、「サークル」というメニューでお腹をいっぱいにしつつ、締めの「デザート」として「学業」を選ぶ、そんな4年間の過ごし方をしていました。(なお、デザートだけでは満足しきれず、今に至っています。)
さて、そんなビュッフェレストランにおける「学業」コーナーの中でも、本ゼミは大分味わいが独特な料理を提供しています。それを味わうために相応のコミットメントを求めており、通常の学部レベルを超える内容を学習することもあります。今の学部2年生の段階で、もしこのようなメニューでお腹を満たしたいという方がいましたら、ぜひとも本ゼミを検討してもらえれば幸いです。また、現段階で「ちょっと無理そうかな」と思われたとしても全然良いと思います。今後、学部の授業や大学院などで、私と関わる機会などもあるかもしれません。皆さまのご応募をお待ちしております。