2024年度向けゼミ募集

Undergraduate and Graduate, , 2023

最終更新:2024/2/7

遠山ゼミの案内

  • ゼミの応募に際しては、本ページ及び、こちらのオリエンテーションスライドをご覧の上検討してください。
  • ゼミに関する質問は、yuta-toyama@waseda.jp までお気軽にどうぞ。

ゼミの概要

本ゼミでは、産業組織論、経済政策(特に競争・規制政策)、消費者行動(家計行動や数量マーケティング)などにおける応用課題について、経済学の知見及びミクロデータを活用した実証研究を行います。

例えば以下のような問を考えてみましょう。

これらは政策・ビジネスに対して重要な示唆を与える問でしょう。しかしながら、皆さんが学んできた経済学の理論分析のみで解答するには難しい課題です。現実の事象や課題を分析し、その結果を政策・ビジネスへ活用するには、実際のデータと向かうことが欠かせません。

本ゼミでは、皆さんが興味を持つ政策・ビジネス上の重要な学術課題に対して、経済学に基づいた定量的な分析を行い、政策・ビジネスへのインプリケーションを持つアウトプット(論文とプレゼンテーション)を産み出すことを目指します。

ゼミの特徴

1. 学生の皆さんの自発的な研究活動を中心とします。

そのためのサポート(例:基礎体力強化、研究の進め方、文献の紹介、データソースの提案などなど)を私は行います。

2. 経済学の知見とデータの融合に基づいた実証研究を目指します。

現実のデータを見て解釈する際に、経済学の知見は非常に強力な「レンズ」となります。

実証研究の方法論について詳しく

経済学においては、実証研究のアプローチとして 「因果推論アプローチ」「構造推定アプローチ」 の2つがあります。両アプローチには強み・弱みがあり、バランス良く学び活用することが重要です。

因果推論アプローチはデータの特徴やたまたま発生したランダムなイベントをうまく活用することで、ある施策・イベントの因果的な効果を推定する方法です。私が過去に行った「特別定額給付金の効果」の推定ではこのアプローチを用いています。 なお、本アプローチに関する良い解説本として伊藤「データ分析の力」が挙げられます。

一方、構造推定アプローチは、経済学の理論モデルとデータ分析を融合したアプローチです。 理論モデルを構築した上でモデルの要素をデータから推定し、モデルのシミュレーション分析を通じてある施策の効果や企業行動の結果について予測を行います。例えば新製品の価格付けを考える際には、消費者の需要関数を推定することで、ある価格のときに需要がいくらになり、結果利潤がいくらになる、といった分析をうことができます。 構造推定アプローチについては、私が現在経済セミナーに連載している上武・遠山・若森・渡辺「実証ビジネス・エコノミクス」の第一回(無料記事)をご覧ください。

これら2つのアプローチ双方において、経済学の知見は非常に重要となります。構造推定アプローチは理論モデルが必要であるため言うまでもないでしょう。一方、因果推論アプローチにおいても、推定した因果効果を解釈し、それが政策・ビジネス上どのような意味があるかを考える上で、経済学の視点が非常に重要です。

本ゼミにおいては、最初の一歩として因果推論アプローチを学び、構造推定アプローチについても技術的に無理のない範囲で学び、皆さんの研究に活用していきます。

なお、因果推論アプローチに関して、ゼミ内で扱った講義資料を参考としてアップロードします。 応募段階で理解する必要はありませんが、ゼミ内での論文輪読やデータ分析を通じてこのような手法についての理解・習熟を目指します。

ゼミの目指すところ

経済学、データ分析、プログラミングを活かした政策・ビジネスに関する応用研究を行える力を身につけると同時に、中長期的にも新しい知識を学び吸収していける人材になることを目指します。

過去20年、経済学における応用研究・実証研究の重要性は増してきている一方です。その背景には、近年の利用可能なデータの増加(いわゆるビッグデータ)という良い面、そして様々な新しい社会・経済問題の発生という悪い面、双方があります。産業組織においてはテック企業のような新しいビジネスモデルがもたらす負の側面をどのように克服するかは、現在のホットトピックです。そして環境経済学では、気候変動に立ち向かうべく脱炭素をどのように達成するかは喫緊の課題です。

そして、アカデミアを出た場所においても、データサイエンティストやミクロ経済学エコノミストなど、統計学・経済学の専門知識を活かして活躍する場が広がってきています。テック企業(いわゆるGAFA)におけるデータサイエンティスト、エコノミストのみならず、 UTEconやNERAといったエコノミックコンサルティング会社など、その活躍の場は多岐にわたります。もちろん、政策の現場においてもデータ分析・経済学のスキルは強く求められています。

一方で、これらデータ分析・経済学のスキルセットへの期待、そしてこれらを使った職種のブームは一過性のものかもしれません。しかしながら、皆さんが真剣に学んだという経験は、その時代に応じて求められる新しい知識を学び、世を切り開いていく上で強く活きてくるものです。「学んだ知識」は陳腐化するかもしれませんが、「学ぶことができる能力」は一生物です。

「今すぐ役に立つもの」と「もしかしたら将来役に立つかもしれない(けど今はそうでない)もの」、その2つをバランスよく学んでいくことが理想です。

ゼミの進め方・流れ

ゼミの進め方及び研究の進め方については、別添のオリエンテーションスライドを参照してください。ここでは、要点のみを記述します。

  • メインのゼミでは、学生の研究の進捗報告を中心に進めます。報告は「短めであるが、頻度多めに」やります。研究、報告、フィードバック、研究、、、というループをガンガン回していきます。
  • 他の学生からの積極的なコメント・質問を期待します。「発表したら後は座っていればいい」という方にはおすすめしません。
  • 研究が中心であるため、卒業論文(演習論文)を必須とします。
  • メインのゼミで輪読はあまりやりませんので、学生によるサブゼミを強く推奨します。輪読する文献の紹介や、輪読で行き詰まったところの相談に乗ります。もしも私が興味あるトピックでしたら私も参加させて頂くかもしれません。

その他、メインの点からは少し離れますが、以下の点も参考にしてください。

  • ゼミ運営の詳細については、参加された方々による建設的提案を強く期待します。
  • 社会的情勢が許せば、ゼミ懇親会やゼミ合宿なども積極的に行えればと思います。が、運営や音頭をとるのは学生の方々に委ねます。
  • 大学院進学希望者には適宜相談や助言に乗ります。
  • 専門職(例えばデータサイエンティストやエコノミスト)希望者には、現職の方を紹介できるかもしれません。
  • ゼミ活動とは独立した完全任意の活動として、私及び他の研究者の方々のリサーチ・アシスタント業務などについてもご紹介できるかと思います(実績有り)。もちろん、ご本人のスキルセット・興味関心とのマッチによります。

履修科目要件について(24年度本選考向け)

ゼミ活動を進める上で、様々な科目を履修し基礎体力をつけていくことは重要です。科目について、皆さんの興味関心に応じて私も様々な提案をさせてもらいます。 特に本ゼミでは実証研究が中心となるため、計量経済学系科目の取得が非常に重要となります。 そこで、ゼミに参加される方については、以下の科目の履修を必須とします。

  • 2023年秋学期における「計量分析(政治)」の履修を必須とします。なお、2023年春学期に履修されている方は不要です。
  • 3年次終了までに「計量経済学1」及び「計量経済学2」ないしそのEDP科目の履修を必須とします。23年春学期に「計量経済学1」を単位取得された方は、23年秋学期における「計量経済学2」の履修を強く推奨します。23年春学期に履修されたいない方は、24年度に「計量経済学1」と「計量経済学2」を履修するか、23年度秋に「Econometrics 1」、そして24年度春に「Econometrics 2」を履修してください。
  • 24年度に私が担当する予定の「応用計量経済学」の履修を強く推奨します。

要するに、3年生が終わるまでに、「計量分析(政治)」と「計量経済学」を履修して頂くという形になります。これらの知識は実証研究を進めていく上で非常に重要なものになります。なお、年度によって科目編成が変更される可能性もありますので、その際には私の方から改めて具体的に要件を提示させて頂きます。

私の紹介

産業組織論の実証研究及び環境・エネルギー分野での応用を中心に研究しています。例えば、企業合併の厚生評価(ゼミ応募者用共有フォルダを参照)や電力産業における排出権取引制度の実証分析です。また少しテーマは離れますが、投票行動の実証研究定額給付金の研究も過去に行っています。 出身や経歴及び日本語で書いた文献などについて、詳しくはこちらのページをご覧ください。

選考について

学部が指定する申請書に加えて、以下で指定する個別課題を、学部事務が指定する締切日までに提出してください。面接は必要に応じて行います。 なお、選考に際しては「研究計画」「志望動機」「個別課題における論文要約」の3点を中心しつつ、「どのような科目をこれまで履修したか、及びその成績」についても参考としながら、評価します。

以下、応募書類に関する詳細です。

学部標準の申請書について

「研究計画」の欄については、興味関心を持った、産業組織論、経済政策、消費者行動分析などにおいて取り組みたいリサーチクエスチョンを述べた上で、なぜその問に回答することが重要なのか(モチベーション)、そしてどのようなアプローチで分析できそうかについて記入してください。特に前者2点(クエスチョンとモチベーション)を重視します。

個別課題について

個別課題は以下の2点について、A4用紙2枚以内でまとめてください。 目役としては、課題1は1枚以上、課題2は半ページ以内です。

課題1:論文のレポート

復学者選考に応募の方は以下の「復学者選考について」についても参考にしてください。

以下の論文は、日本における家計の電力需要及び節電行動に関してフィールド実験を行った論文です。

Ito, Koichiro, Takanori Ida, and Makoto Tanaka. 2018. “Moral Suasion and Economic Incentives: Field Experimental Evidence from Energy Demand.” American Economic Journal: Economic Policy, 10 (1): 240-67. 

本論文を読んだ上で、以下の点を踏まえた論文のレポートを作成してください。

  • レポートは2パートに分けてください。パート1は論文の中身に関する要約、パート2は論文に基づく議論・疑問点です。
  • パート1について
    • 箇条書きではなく、文章として書いてください。また、適宜段落分けや、段落の先頭について空白を設けるなど、文章として体裁が整ったものにしてください。
    • 以下のような内容について触れてください。
      • この論文における問(リサーチ・クエスチョン)は何か?
      • なぜ、その問いに解答することが重要か?
      • どのような手法でその問いに解答しているか?
      • この論文の主たる結果は何か?
      • この論文の結果は、アカデミックな文献及び現実の政策について、どのような含意を持つか?
  • パート2について
    • ここは箇条書きで構いません。
    • 論文を読んでいてわからなかった点・疑問に思った点を挙げてください。
    • 論文における限界点・欠点について議論してください。ただし、論文に書かれている内容をそのまま挙げるだけではなく、あなた自身が考える問題点・欠点を書いてください。仮に論文に書かれている内容でも、より一歩踏み込んだもの(例:その限界点によりどのような問題が生じるのか?)を書いてください。
    • どのような形で論文を発展させることができるか、もしアイデアがあれば記述してください。

なお、本論文の要約はプレゼミ期間における論文輪読で活用する予定です。

課題2:プログラミング経験及び計量経済学の学習計画

プログラミング経験(R、Stata、Python、Matlab、その他)について記入してください。また、上述した「計量経済学系科目に関する要件」を踏まえて、2022年秋学期の授業履修計画について記入してください。 なお、現時点におけるプログラミング経験及び計量経済学の知識については選考において重視しません(あくまで参考材料として聞いています。) ただし、ゼミにおける研究活動においてこれら2つは将来的に非常に重要になるということを理解した上で応募して頂ければ幸いです。

【2024/2/7更新】復学者選考について

  • 復学者選考での応募を検討されている方は、応募前に私へ問い合わせ(質問など)頂ければと思います。その上で最終的な応募を判断して頂ければと思います。
  • 23年冬クォーターのプレゼミ参加者には「計量分析(政治)」の履修をして頂いており、Rの基礎的な操作、統計学・計量経済学の入門について勉強してもらっています。同じ科目について現段階で履修していただいている必要は一切ありませんが、同程度の内容について理解していることをゼミ参加要件とします。この点について応募書類(課題2の部分)で説明して頂ければと思います。
  • プレゼミにおいて、以下の3本の論文を輪読しました。個別課題の論文要約においては、以下の3本の論文の中から一本を選択してください。
    1. Ito, Koichiro, Takanori Ida, and Makoto Tanaka. 2018. “Moral Suasion and Economic Incentives: Field Experimental Evidence from Energy Demand.” American Economic Journal: Economic Policy, 10 (1): 240-67.
    2. Braghieri, Luca, Ro’ee Levy, and Alexey Makarin, 2022. “Social Media and Mental Health,” American Economic Review
    3. Kyogo Kanazawa, Daiji Kawaguchi, Hitoshi Shigeoka & Yasutora Watanabe. 2022. “AI, Skill, and Productivity: The Case of Taxi Drivers.” Working Paper
  • 面接は3月15日(金)に対面・Zoomのいずれかで行います。面接を行う場合のみ連絡します。面接の連絡がない場合は、今回は御縁がなかったものとしてご理解ください。