2025年度向けゼミ募集

Undergraduate and Graduate, , 2024

最終更新:2024/8/5

遠山ゼミの案内

ゼミの概要

本ゼミでは、産業組織論、経済政策(特に競争・規制政策)、消費者行動(家計行動や数量マーケティング)などにおける応用課題について、経済学の知見及びマイクロデータを活用した実証研究を行います。

例えば以下のような問を考えてみましょう。

これらは政策・ビジネスに対して重要な示唆を与える問でしょう。しかしながら、皆さんが学んできた経済学の理論分析のみで解答するには難しい課題です。現実の事象や課題を分析し、その結果を政策・ビジネスへ活用するには、実際のデータと向き合うことが欠かせません。

本ゼミでは、皆さんが興味を持つ政策・ビジネス上の重要な学術課題に対して、経済学に基づいた定量的な分析を行い、政策・ビジネスへのインプリケーションを持つアウトプット(論文とプレゼンテーション)を生み出すことを目指します。

ゼミの特徴

1. 学生の皆さんの自発的な研究活動を中心とします。

そのためのサポート(例:基礎体力強化、研究の進め方、文献の紹介、データソースの提案など)を私は行います。

2. 経済学の知見とデータの融合に基づいた実証研究を目指します。

現実のデータを見て解釈する際に、経済学の知見は非常に強力な「レンズ」となります。

実証研究の方法論について詳しく

経済学においては、実証研究のアプローチとして 「因果推論アプローチ」「構造推定アプローチ」 の2つがあります。両アプローチには強み・弱みがあり、バランス良く学び活用することが重要です。

因果推論アプローチはデータの特徴やたまたま発生したランダムなイベントをうまく活用することで、ある施策・イベントの因果的な効果を推定する方法です。私が過去に行った「特別定額給付金の効果」の推定ではこのアプローチを用いています。なお、本アプローチに関する良い解説本として伊藤「データ分析の力」が挙げられます。

一方、構造推定アプローチは、経済学の理論モデルとデータ分析を融合したアプローチです。理論モデルを構築した上でモデルの要素をデータから推定し、モデルのシミュレーション分析を通じてある施策の効果や企業行動の結果について予測を行います。例えば新製品の価格付けを考える際には、消費者の需要関数を推定することで、ある価格のときに需要がいくらになり、結果利潤がいくらになる、といった分析を行うことができます。構造推定アプローチについては、私が現在経済セミナーに連載している上武・遠山・若森・渡辺「実証ビジネス・エコノミクス」の第一回(無料記事)をご覧ください。

これら2つのアプローチ双方において、経済学の知見は非常に重要となります。構造推定アプローチは理論モデルが必要であるため言うまでもないでしょう。一方、因果推論アプローチにおいても、推定した因果効果を解釈し、それが政策・ビジネス上どのような意味があるかを考える上で、経済学の視点が非常に重要です。

本ゼミにおいては、最初の一歩として因果推論アプローチを学び、構造推定アプローチについても技術的に無理のない範囲で学び、皆さんの研究に活用していきます。

なお、因果推論アプローチに関して、ゼミ内で扱った講義資料を参考としてアップロードします。応募段階で理解する必要はありませんが、ゼミ内での論文輪読やデータ分析を通じてこのような手法についての理解・習熟を目指します。

ゼミの目指すところ

経済学、データ分析、プログラミングを活かした政策・ビジネスに関する応用研究を行える力を身につけると同時に、中長期的にも新しい知識を学び吸収していける人材になることを目指します。

過去20年、経済学における応用研究・実証研究の重要性は増してきている一方です。その背景には、近年の利用可能なデータの増加(いわゆるビッグデータ)という良い面、そして様々な新しい社会・経済問題の発生という悪い面、双方があります。例えば、テック企業のような新しいビジネスモデルがもたらす負の側面をどのように克服するかは、産業組織論におけるホットトピックの一つです。また、気候変動に立ち向かうべく脱炭素をどのように達成するかは、環境分野における喫緊の課題です。

そして、アカデミアを出た場所においても、データサイエンティストやミクロ経済学エコノミストなど、統計学・経済学の専門知識を活かして活躍する場が広がってきています。テック企業におけるデータサイエンティスト、エコノミストのみならず、エコノミックコンサルティング会社など、その活躍の場は多岐にわたります。もちろん、政策の現場においてもデータ分析・経済学のスキルは強く求められています。

一方で、これらデータ分析・経済学のスキルセットへの期待、そしてこれらを使った職種のブームは一過性のものかもしれません。しかしながら、皆さんが真剣に学んだという経験は、その時代に応じて求められる新しい知識を学び、世を切り開いていく上で強く活きてくるものです。「学んだ知識」は陳腐化するかもしれませんが、「学ぶことができる能力」は一生物です。

「今すぐ役に立つもの」と「もしかしたら将来役に立つかもしれない(けど今はそうでない)もの」、その2つをバランスよく学んでいくことが理想です。

ゼミの進め方・運営について

ゼミの進め方及び研究の進め方については、別添のオリエンテーションスライドを参照してください。ここでは、要点のみを記述します。

  • メインのゼミでは、学生の研究の進捗報告を中心に進めます。報告は「短めであるが、頻度多めに」やります。研究、報告、フィードバック、研究、、、というループをガンガン回していきます。
  • 他の学生からの積極的なコメント・質問を期待します。「発表したら後は座っていればいい」という方にはおすすめしません。
  • プレゼミから3年生にかけては、少人数のグループワークが中心となります。
  • 研究が中心であるため、卒業論文(演習論文)を必須とします。
  • メインのゼミで輪読はあまりやりませんので、学生によるサブゼミを強く推奨します。輪読する文献の紹介や、輪読で行き詰まったところの相談に乗ります。もしも私が興味あるトピックでしたら私も参加させて頂くかもしれません。

その他、メインの点からは少し離れますが、以下の点も参考にしてください。

  • 授業時間以外のゼミ活動(懇親会・合宿・新歓、など)については、ゼミ生の皆さまに運営をお任せできればと思います。
  • 大学院進学希望者には適宜相談に乗ります。専門職(例えばデータサイエンティストやエコノミスト)希望者には、現職の方を紹介できるかもしれません。また、ゼミOB/OGとの交流なども徐々に設けられるようになればと思います。
  • ゼミ活動とは独立した完全任意の活動として、私及び他の研究者、研究機関などにおけるリサーチ・アシスタント業務などについてもご紹介できるかもしれません(実績有り)。もちろん、ご本人のスキルセット・興味関心とのマッチによります。

【重要】ゼミ時間に関する詳細

  • 2024年度のプレゼミは秋学期の金曜日5限に行います。金曜日5限の時間割を開けていただくようお願いします。
  • 2025年度は、3・4年生の合同ゼミを月一回程度行います。具体的なスケジュールは学期開始時に調整しますが、時間割上金曜日3限・4限について連続で開けてもらうようお願いします。なお、通常のゼミでは、金曜日3限が3年生、金曜日4限が4年生ゼミになります。

サバティカルについて

担当教員は2026年3月頃から特別研究期間(サバティカル)を取得する予定です。日本国内の研究機関に滞在する予定ですが、以下のような形でゼミ運営に多少影響があることをご了承ください。

  1. 3期生を対象とした2026年度のゼミ(演習3・4)の一部がオンラインでの開講になる可能性があります。なお、ゼミ合宿は通常通り開催して頂いて構いません。
  2. 25年夏のゼミ募集は行いません(つまり26年度に3年生対象としたゼミ(演習1・2)は行いません)。

履修科目要件について(2024年夏の選考向け)

注:復学者選考による演習2への参加希望の方(現3年生相当の方)は、こちらを参照してください

ゼミ活動を進める上で、様々な科目を履修し基礎体力をつけていくことは重要です。科目について、皆さんの興味関心に応じて私も様々な提案をさせてもらいます。 特に本ゼミでは実証研究が中心となるため、計量経済学系科目の取得が非常に重要となります。そこで、ゼミに参加される方については、以下の科目の履修を必須とします。

  • 2024年秋学期における「計量分析(政治)」の履修を必須とします。なお、2024年春学期に履修されている方は不要です。
    • 秋学期には、火曜3限火曜4限に開講されています。定員オーバーの可能性もあるかもしれませんので、両コマ開けて頂き、一次登録で漏れた場合も二次選考で登録できるよう計らって頂ければと思います。
  • 3年次終了までに「計量経済学1」及び「計量経済学2」ないしそのEDP科目の履修を必須とします。
    • 24年春学期に「計量経済学1」を単位取得された方は、24年秋学期における「計量経済学2」の履修を強く推奨します。
    • 24年春学期に履修されていない方は、25年度に「計量経済学1」と「計量経済学2」を履修するか、24年度秋に「Econometrics 1」そして25年度春に「Econometrics 2」を履修してください。
  • 25年度秋学期に私が担当する予定の「応用計量経済学」の履修を極めて強く推奨します。

要するに、3年生が終わるまでに、「計量分析(政治)」と「計量経済学」を履修して頂くという形になります。これらの知識は実証研究を進めていく上で非常に重要なものになります。なお、年度によって科目編成が変更される可能性もありますので、その際には私の方から改めて具体的に要件を提示させて頂きます。

私の紹介

産業組織論の実証研究及び環境・エネルギー分野での応用を中心に研究しています。例えば、企業合併の厚生評価(ゼミ応募者用共有フォルダを参照)や電力産業における排出権取引制度の実証分析です。また少しテーマは離れますが、投票行動の実証研究定額給付金の研究も過去に行っています。出身や経歴及び日本語で書いた文献などについて、詳しくはこちらのページをご覧ください。

選考について

学部が指定する申請書に加えて、以下で指定する個別課題を、学部事務が指定する締切日までに提出してください。面接は必要に応じて行います。なお、選考に際しては「研究計画」「志望動機」「個別課題における論文要約」の3点を中心しつつ、「これまでの履修科目(とその成績)」についても参考としながら、評価します。

以下、面接及び応募書類に関する詳細です。

面接について

面接は9月17日(火)に行います。9月14日(土)の夕方までに日程調整のご連絡を各自のメールアドレス宛てに行います。面接は20-25分程度の予定です。9月17日については極力日程を空けて頂けるよう、ご協力をお願いします。面接の詳細は面接対象者にご連絡します。

学部標準の申請書について

「研究計画」の欄については、興味関心を持った、産業組織論、経済政策、消費者行動分析などにおいて取り組みたいリサーチクエスチョンを述べた上で、なぜその問に回答することが重要なのか(モチベーション)、そしてどのようなアプローチで分析できそうかについて記入してください。特に前者2点(クエスチョンとモチベーション)を重視します。

個別課題について

個別課題は以下の2点について、A4用紙2枚以内でまとめてください。目安としては、課題1は1枚以上、課題2は半ページ以内です。

課題1:論文のレポート

復学者選考に応募の方は以下の「復学者選考について」についても参考にしてください。

以下の論文は、日本における家計の電力需要及び節電行動に関してフィールド実験を行った論文です。

Ito, Koichiro, Takanori Ida, and Makoto Tanaka. 2018. “Moral Suasion and Economic Incentives: Field Experimental Evidence from Energy Demand.” American Economic Journal: Economic Policy, 10 (1): 240-67.

本論文を読んだ上で、以下の点を踏まえた論文のレポートを作成してください。

  • レポートは2パートに分けてください。パート1は論文の中身に関する要約、パート2は論文に基づく議論・疑問点です。
  • パート1について
    • 箇条書きではなく、文章として書いてください。また、適宜段落分けや、段落の先頭について空白を設けるなど、文章として体裁が整ったものにしてください。
    • 以下のような内容について触れてください。
      • この論文における問(リサーチ・クエスチョン)は何か?
      • なぜ、その問いに解答することが重要か?
      • どのようなデータ・手法を用いてその問いに解答しているか?
      • この論文の主たる結果は何か?
  • パート2について
    • ここは箇条書きで構いません。
    • 論文を読んでいてわからなかった点・疑問に思った点を具体的に挙げてください。
    • 論文における限界点・欠点について議論してください。ただし、論文に書かれている内容をそのまま挙げるだけではなく、あなた自身が考える問題点・欠点を書いてください。仮に論文に書かれている内容でも、より一歩踏み込んだもの(例:その限界点によりどのような問題が生じるのか?)を書いてください。
    • この論文で得られた結果は、現実の政策についてどのようなインプリケーションを持つか(もしくは持たないか)について、あなた自身の考えを書いてください。論文内で議論されている点と被るかもしれませんが、より一歩踏み込んで考えてみてください。
    • どのような形で論文を発展させることができるか、もしアイデアがあれば記述してください。

なお、本論文の要約はプレゼミ期間における論文輪読で活用する予定です。

課題2:プログラミング及び統計・計量科目の学習経験及び学習計画

プログラミング経験(R、Stata、Python、Matlab、その他)及び統計・計量科目の学習経験について記入してください。また、上述した「計量経済学系科目に関する要件」を踏まえて、2024年秋学期の授業履修計画について記入してください。なお、現時点におけるプログラミング経験及び計量経済学の知識については選考において重視しません(あくまで参考材料として聞いています。)過去のゼミ生も、ゼミ加入後(2年生秋学期以降)にプログラミング・計量経済学を学び始めた方々ばかりです。ただし、ゼミにおける研究活動においてこれら2つは将来的に非常に重要になるということを理解した上で応募して頂ければ幸いです。

復学者選考への応募希望、及び留学予定の方々へ

本ゼミでは、交換留学及び留学からの復学後のゼミ参加についても臨機応変に対応したく考えております。 しかしながら、ゼミでの学習内容、特に統計・計量系科目やプログラミングの学習は累積的なものになります。 したがたって、復学後に参加を希望される場合には、留学中に同等の科目を履修・学習していただく必要があります。

以下、留学・復学のタイミングの代表的なパターンそれぞれについて、留学中の学習アドバイス及び参加に際しての要件の目安を書かせて頂きます。 詳細について尋ねたい方は遠山までメールでお問い合わせ頂ければと思います。

24年9月の復学者選考において、2024年秋学期の演習2から参加希望の方

本ゼミでは2年生秋学期から3年生にかけて、計量・統計系の科目の履修を必須としてお願いしています。 特に、2年秋学期「計量分析(政治)」において、計量分析(回帰分析)の基礎に加えて、R言語によるプログラミングを学習してもらっています。(シラバスへのリンク) また、3年時には計量経済学1・2の履修をお願いしています。

もちろん、留学されていた復学者の方はこれらの科目を早稲田において履修していることは難しいかと思いますので、代わりに留学先などで同等の内容を既に勉強しているかについて、要件とさせてもらっています。具体的な目安としては、Econ RA Guide(リンク先参照)におけるデータ分析タスクに、R/Python/Stataなどを用いて自分自身で取り組める、という程度のものです。(本タスクは、3年生ゼミの春学期に全員に取り組んでもらっています。なお、ページの下に「制限時間6時間」とありますが、これは無視してください。)

以上を踏まえて、演習2以降への参加を希望・検討される方は、8月16日(金)までに必ず遠山までメールによる連絡をお願いします。特に演習2(3年生ゼミ)については、運営に関連する重要な点がありますので、必ずご連絡頂ければ幸いです。

現在2年生で今後留学し、2025年3月・9月の復学者選考に応募を考えている方

2025年3月・9月の復学者選考については通常通り行う予定です。なお、2026年3月・9月については行いません。

2025年3月に応募し演習1から参加希望の方は、留学先で「計量分析(政治)」や「計量経済学」と同等の科目を履修されると良いと思います。 なお、復学後(25年度)の25年春学期に早稲田においてこれらの科目を履修することも可能です。応募の詳細については25年冬に再度案内します。

2025年9月に応募し演習2から参加希望の方は、上述の24年9月の復学者選考についてご覧頂けるとよいかと思います。演習1(3年生春学期)において様々な基礎トレーニングを積んでいただくため、25年3月における復学者選考よりも履修・学習要件が多めになることをご了承ください。

最後に

私個人の考えとして、大学は「ビュッフェレストラン」のような場所であって欲しいと思っています。学業、サークル、学外の活動、アルバイト、などなど、大学4年間の時間の使い方として様々なオプションがあり、それを皆さん自身が自由に選べるという場所です。実際、私が学部生だった頃は、「サークル」というメニューお腹をいっぱいにしつつ、締めの「デザート」として「学業」を選ぶ、そんな4年間の過ごし方をしていました。(なお、デザートだけでは満足しきれず、今に至っています。)

さて、そんなビュッフェレストランにおける「学業」コーナーの中でも、本ゼミは大分味わいが独特な料理を提供しています。それを味わうために相応のコミットメントを求めており、通常の学部レベルを超える内容を学習することもあります。今の学部2年生の段階で、もしこのようなメニューでお腹を満たしたいという方がいましたら、ぜひとも本ゼミを検討してもらえれば幸いです。また、現段階で「ちょっと無理そうかな」と思われたとしても全然良いと思います。今後、学部上級の授業や大学院などで、私と関わる機会などもあるかもしれません。皆さまのご応募をお待ちしております。